タイニー・タイニー・ハッピー

「小さな小さな幸せ」を意味するタイニー・タイニー・ハッピーという名前の大型ショッピングモールを舞台にした連作短編集。8つの短編それぞれ語り手が違うので同じ人なのに見方によって色んな顔が見えるようになっていてそこのとこが面白いなあと感じました。空気読みすぎちゃう人がいるかと思えば、全くそんなの意に介せずの人もいたり。お仕事小説でもあり恋愛小説でもあるこの本、連作短編のよさがよく出ているなあと思いました。
巻末の解説がちょっと私は好きではありませんでした。この解説が書かれた時点で発売されていた飛鳥井さんの本はこの本を除いて6冊。作家として伸び悩んだ時期もあったがとても面白い作家であるというふうに飛鳥井さんの事を紹介しています。論旨を見れば、別にいやーなとこはないんですがなんとなーく好きじゃない。何が好きじゃないのかなって考えたら、文庫本の解説なのにこの作家は○○と△△だけとりあえず読んどけばいいよって書かれてたのが嫌だったのかもしれません。途中伸び悩んじゃったけどまあそれはどの作家でもあることだしねーという感じもちょっともやっとしてしまったというか。
これね、文庫本の解説ではなく書評として別個に掲載されてるものだったら全然気にならなかったと思うんです。文庫解説としてだからちょっと気になるというか。書評って必ずしも対象の本や作家をほめちぎるものじゃあないですよね。こきおろされたりすることだってある。でも、書評ってそういうものだと思うんです。リップサービスして作家を甘やかすのが書評家の仕事じゃないもの。
文庫解説というのは通常の書評の仕事とはちょっと違うとこにあるのかなと私は考えます。1冊本を読んだ最後、この本を読んだ人がどういうふうに読み終えるのか、どんな気持ちで読み終わってほしいのかを想定した文章を書くのが大事なのかなーと。そのためにそっと添える文章が文庫解説なのではないのかと思います。だから主張しすぎず、かいとって空気過ぎずみたいな文章が文庫解説にはちょうどいい気がする。でもそこをちょうどいい塩梅にするのって意外と難しいんでしょうねえ。