母性

母性

母性

うわーなんて気持ちの悪い話なんだ(褒め言葉)というのがこの本の全てです。タイトルについてはきっともっと色んなふうにひねったものをつけることも可能だったんでしょうが、あえて直球勝負にきたのでしょうね。あえて『母性』というタイトルにしたのは母性神話や母性を取り巻く色んなものへの気持ち悪さというのもあったのかなあと思いました。
この本は母と娘、それぞれが語り手になって同じ出来事が語られていくという構成になっています。母視点と娘視点、それぞれ違う立場だから当たり前といえば当たり前ですが全く違った風景がそこには広がっています。そこで描かれる母親の一方的な思いとそれでも母を慕いたい愛されたいと願う娘の気持ちが痛いのなんのって。だって完全にすれ違ってるんだもの。母は目の前の娘ではなく、フィルターを通してしか娘を見ることができない哀しさったらないですね。
『母性』で描かれる母は、母であると同時に母の娘でもありました。というか、母であることよりも娘でありたいと願う母の話でした。母だからといってすべてを子に注ぎ込むべきとは思いません。だけど、エゴの塊というのもこれまた両極端だしなあ。バランスって難しいものですね。