マリアージュ・マリアージュ

マリアージュ・マリアージュ

マリアージュ・マリアージュ

結婚をテーマにした短編集。金原さん随分と大人になったなあと感じました。主人公たちの年齢が上がっただけではなく、作家として洗練されたような気がしました。根っこの部分は変わりないんだろうけど、初期作とは作品の舌触りは違います。ヒリヒリする読後感は変わらないものの、ヒリヒリの感触が少し違うというか。場面の切り取り方、言葉の選び方がうまくなったように思います。以前と同じような感覚の作品はもう書かないのかもしれない、でも今の彼女が描く世界が私は面白いなあと思うのです。作家の進化をこうやって追っていけるのはやっぱり嬉しいなあ。
私生活とリンクするように作品のテーマを結婚子育てにシフトしていっている金原さんが次はどのようなテーマを選ぶのか興味深いです。しばらくはこのテーマのまま作家活動を続けてくのかなあと思うけど、彼女が次に何を思うのかが楽しみです。

象牙色の眠り

象牙色の眠り (文春文庫)

象牙色の眠り (文春文庫)

柴田版家政婦は見たな感じのお話。事件がどんどん起こって人がバッタバッタ死んでいきます。お屋敷らしく一癖も二癖もある人たちが出てきて物語っぽいなあというふうに思いました。誰も彼もが秘密を抱えていてウソと本当が錯綜しててドロドロの惨劇が起こるのがいかにもって感じ。犯人のあの人は言われてみれば犯人っぽいのですが、たぶんないだろうなあと思って読んでたから頭殴られた気分になりました。ラストについては読者にゆだねる形になっているのが人によっては評価が分かれるのかなーと。私はああいう余韻残す終わり方って好きだけど、はっきり書かないのを嫌がる人もいるものね。

その手をにぎりたい

その手をにぎりたい

その手をにぎりたい

バブル時代の東京を駆け抜けたOLの話。仕事をやめて栃木の実家に帰ろうとしていた青子だが上司に連れて行かれた高級鮨屋すし静によって人生を大きく方向転換してバブルの波に飲まれていきます。はじめはいわゆる普通のOLで普通の女の子であった青子。しかし彼女は徐々に変わっていきます。生き生き輝きながら仕事したり私生活を満喫していたたかと思えば、時代の波に飲まれて疲弊したりもします。そんな中、彼女を支え続けたのがすし静の寿司を食べること。すし職人の彼の握るすしを食べることが彼女のモチベーションとなってまい進していくのです。恋と食への執着が彼女を東京に留め置いた。彼女の生き方をしんどいなあと思いながらも、モチベーションにできる何かを持ち続けられるのは幸せなことなのかもしれないなあと感じます。
柚木さんって食べることが本当に大好きなんだろうなあって思います。食べ物の描写に愛があるもの。いくつかの本で食べ物を小道具に使っているんだけど、そのどれもがおいしそうで小道具としてきらりと光っているのが私は好きだなあと思うのです。

ターミナルタウン

ターミナルタウン

ターミナルタウン

三崎版町おこしみたいなお話。今までの三崎ワールドと地続きな感じになっています。ちょっと冗長かなとか最後のところうまくまとまりすぎかなと思わないでもないけれど、あの空気感が好きなのでやっぱりどんどん読み進めちゃうという。作品全体の空気が柔らかくなったように感じます。人はそれを丸くなったとか言うかもしれないがそれの何がわるいんじゃいって私は思います。