シャイロックの子供たち

シャイロックの子供たち (文春文庫)

シャイロックの子供たち (文春文庫)

銀行を舞台にした連作短編から成り立つミステリ。はじめはただの連作短編集だと思いきや、100万円紛失事件を機にミステリ色が強まっていって一気に読めました。登場人物が多いけれど、それを煩わしいと感じさせず上手くかき分けてるのはすごいです。ちゃんとそれぞれの短編の主人公たちに厚みが感じられて彼らは人生を生きているんだと思わせてくれてます。
銀行だけじゃなくて企業っていうのは色んな人の集まりで成立してる組織であって、ほんのちょっとしたことで人生の坂を転がり落ちて行く人はたくさんいます。仕事ができても世渡りができずにくすぶってる人、逆に仕事はそんなに目を見張るほどできるわけじゃないのに上手く出世をしていく人、それぞれです。人生のブラックホールはどこで口を開けて待っているのかわかりません。気付かずに吸い込まれてしますこともあります。「シャイロックの子供たち」はそういった怖さをえぐっている小説です。