空耳の森

空耳の森 (ミステリ・フロンティア)

空耳の森 (ミステリ・フロンティア)

決して悪くはない出来だしどちらかといえばよい方に入る小説なのに、デビュー作デビュー後1作目が素晴らしくってちょっとそれに比べたら見劣りしちゃうかなあなどと感じてしまった私がバカでございました、と言いたくなるくらいよかったです。9つの短編たちは心地よい読後感の小説たちだけではありません。胸がギュっとなったもの、居心地の悪さにゾワゾワしてしまったもの、色々とあります。だけども、最後まで読んだあとに残ったのはこの本を手に取れてよかったなあという気持ちでした。あとは、ネタばれなしに読めてよかったなあっていうのもあります。ネタばれをしていても楽しめる本なんだけど、ネタばれなしで新鮮な気持ちで読めるほうのがより驚きも多くてよいかなあと思うのです。普段は自分が読む上ではそんなにネタばれって気にしないけどね。
以下ネタばれしてるので畳みます。
独立した短編だとばかり思ってたら実はすべてが繋がっていてしかもデビュー作から続く七海学園シリーズだと分かった時の驚きといったらなかったです。それぞれの短編も素晴らしかったんだけど、やっぱりそれらが最後に収束していく様が本当に快感でした。ああ、これぞ連作短編集を読む醍醐味だわって。読んでるうちにもしかしたらこの短編たちはバラバラなのではなく、連作なのではないかということに気づいたものの、最後を締めくくる「空耳の森」でこの小説の舞台が明言されて「あーそうなのかー!!」ってなった時の気持ちったらねえ。読み返してみると、色々とヒントは出てたのにぼんやり頭でスルーしてたあたりがあれだったけど。よい読書時間でした。