無理

無理

無理

東北地方にあるという架空の町ゆめの市で生きる5人の視点を通して描かれた物語。彼らには接点はなく、職業も年齢も性別もバラバラ。読者には所々で彼らがすれ違うのがわかるけど、物語の中の彼らにはそれはわからない。彼らは福祉事務所のバツイチの男、東京の大学進学を夢見る高2の女の子、保安員をしながら新興宗教にいれ込んでいるバツイチの女、元暴走族でインチキセールスをしている若い男、父親の地盤を引き継ぎ市会議員をしている男の5人です。そんな彼らがタイトルにあるような「無理」に向かっていくというお話です。『最悪』『邪魔』と続く一連の感じのテイストなのですっきり感はないし、好みは分かれるのかなーと思います。
一応章ごとに視点人物がいるのだけど、この物語の真の主人公は舞台でもあるゆめの市なのだと思うのです。ゆめの市自身が語ることができないので視点人物たちを通してこの街の今を語らせてるのだと。地方が抱える問題*1を体現する彼らを通してそのまま描いてるように感じました。
読みながらあまちゃんの事を考えたりもしてました。『無理』は具体的には県名はでてはいないものの、東北地方の町であることが示されています。そしたら考えないわけないもの。うーん、しょっぱいなあ。あまちゃんとは違ったしょっぱさを感じました*2

*1:本当はここで描かれてる問題は地方だけの問題ではないのだろうと思う。特に貧困の問題なんかは都市でも決して無視できない話だ。

*2:あまちゃんがしょっぱくないということはないです。春子が東京へ出ていくに至った経緯や海女さんの後継者問題や地方都市の疲弊などしょっぱいとこはいっぱいあるもの。ただ、しょっぱさをしょっぱいまま届けないように描こうとしてるのだと思う、今のところは。