いつか響く足音

いつか響く足音 (新潮文庫)

いつか響く足音 (新潮文庫)

閑散としてきたニュータウンの団地に住んでいる彼女たちを描いた連作短編集。このお話に出てくる人たちに共通しているのは、何らかの理由があって家族を失ってしまった過去を見せないようにして生きているということです。親を自殺で亡くしてしまったり、嫁姑問題をこじらせて疎遠になってしまったり、結婚がついてなかったり。それらを隠して団地で生きているんです。だから、外から見たら別に問題もなく生きているように見えても実は全然そうじゃなかったりするというような描き方になっているので人というのはその時に見えている部分が全てじゃないんだよなあという当たり前のことを思ったりしました。そんな彼らが団地を疑似家族として生き直していくのかなという光が見えたのはよかったのかなあと感じます。血縁だけが家族にとっての唯一無二のものじゃない。縁は血だけじゃないものね。