悪人

悪人

悪人

保険屋のOLが殺されたという言っちゃあ悪いが地味な事件を描きながらもとっても読みごたえがある本でした。以前、一度吉田作品は読んだことがあるもののピンと来る事が無くてそれ以来ご無沙汰してたものの、ぐいぐい読めちゃいました。それぐらい力のある本。
この本は色んな人の視点から語られています。被害者の視点、加害者の視点、それぞれの関係者の視点。だからすごく広がりがあるんですよね。もちろん、一人称の話だって私は大好きです。だけど、こういうふうに多視点で語られる物語というのもとてもいいのです。みんなちがってみんないいってことです。ラストに近づくにつれ、作中で真実だと思ってた事がするりと逃げていってぼやけていく様がなんともいえなかったです。でも、真実ってそういうものなのかもしれない。形が定まってなくてぼやぼやしているうちにどこかにいなくなってしまう幻。
映画版見てないんで今度ゆっくり見てみたいな。