ナイフ

ナイフ

ナイフ

学校でのいじめをテーマにした5つの話を収めた短編集。ある日突然ハブにされる女子中学生、息子がいじめられている父親、幼馴染の男の子がいじめられてるのを傍観している女の子、転校生に「オレたち親友だよな」といって理不尽にいじめられる小学生、教育をかさに児童たちを支配する小学校教師に苛立つ妻を見つめる夫。どこにでもあるような家庭のどこにでもいるような人たちが主人公の短編集です。いじめの描写はどれもえぐいです。
暴力をふるわれたりお金を取られたりするいじめが怖いのは当たり前だけど、私は「ワニとハブとひょうたん池で」で描かれるゲームとしてのいじめが1番恐ろしいです。退屈しのぎに誰かを生贄に集団で無視をするというのは、子供ならではの発想だと思うし子供ならではの残酷さそのものです。子供時代って学校がすべてじゃないですか。逃げ場がないっていうか。だからこそ、いじめが蔓延するのだと思います。ガス抜きとしてのいじめが。大人になれば、いろいろな場があって1つ駄目でもほかがあるって思えるけど、子供にはそれがありません。これっていじめ問題を考えるうえで避けて通れないことだと思うのだけど。