ココデナイドコカ

ココデナイドコカ (祥伝社文庫)

ココデナイドコカ (祥伝社文庫)

妙齢のちょっと不幸なところのある女性たちを描いた9つの短編を集めた短編集。どの短編の女性も現実にいそうな感じがして妙にリアリティがありました。いつも欲しいものが手に入らなかったから代用品で我慢していると思っている女を描いた「代用品」、ライターをやっている女の「事情通」、子供を亡くして離婚して実家に戻った女の「幸福」の3つが面白かったです。

自分の中の奈月はずっと幼稚園児だ。
花嫁にもならず、髪を染めて不良にもならず、母にもならない。
自分が死んだとき、奈月の写真はもうだれにとっても意味がなくなるので、一緒にお棺に入れてもらうしかないのだ、佐竹さんにとっての浩太郎さんの写真のように。
しかし、それが不幸だろうか。
綿々と続く血脈だけが、果して幸福なのだろうか。

これまた真なり。死んでしまった娘は帰ってはきません。死んだ子の年を数えるような真似をしても、その子は永遠に年をとることはないです。これは不幸です。が、永遠に成長しないからこそ、「理想の子供」のままでいてくれることも可能なわけです。生きていれば、いいこともうれしいことも楽しいこともたくさんあるけれど、そうじゃないこともあります。「理想の子供」のまま大きくなってくれるわけじゃないからです。だからこそ、「幸福」の主人公は不幸の中に幸福を見つけたのでしょう。