- 作者: 島村洋子
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2006/07
- メディア: 文庫
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自分の中の奈月はずっと幼稚園児だ。
花嫁にもならず、髪を染めて不良にもならず、母にもならない。
自分が死んだとき、奈月の写真はもうだれにとっても意味がなくなるので、一緒にお棺に入れてもらうしかないのだ、佐竹さんにとっての浩太郎さんの写真のように。
しかし、それが不幸だろうか。
綿々と続く血脈だけが、果して幸福なのだろうか。
これまた真なり。死んでしまった娘は帰ってはきません。死んだ子の年を数えるような真似をしても、その子は永遠に年をとることはないです。これは不幸です。が、永遠に成長しないからこそ、「理想の子供」のままでいてくれることも可能なわけです。生きていれば、いいこともうれしいことも楽しいこともたくさんあるけれど、そうじゃないこともあります。「理想の子供」のまま大きくなってくれるわけじゃないからです。だからこそ、「幸福」の主人公は不幸の中に幸福を見つけたのでしょう。