千年ジュリエット

千年ジュリエット

千年ジュリエット

ハルチカシリーズ第4弾。初の東海大会出場を果たした夏を終えて、文化祭を迎えた彼らを連作短編の形で描いています。

わたしには決めていることがある。
大人になって高校時代のことを話すときがきたら、辛かった思い出話は決して口にしないと。
その代わり、どんなに苦しいときでも、みんなと素敵な寄り道ができたことを伝えたい。どんなに厳しい環境でも、ちょっとだけ遠回りして楽しく生きたことを教えてあげたい。
それが許される有限の時間は、だれにでも必ずおとずれるのだから――

「イントロダクション」からの引用。私がジュブナイルが青春小説が好きな理由の一つがここにあるんだなあと読んで感じました。青春時代ってかっこ悪いことも楽しいことも色々あってそういうの丸っとこみで青春なんです。ただ、その時間はいつまでも続くわけじゃない。いつかは終わりがくる。今は一緒の方向を見て同じ時間を過ごしている仲間でもいずれはそこから旅立ち、みな新しい場所へと軸を動かしていく。だからこそ、その限られた時間が愛おしいなあと感じると思うのです。これは私が年をとったからこそ、余計にそこにノスタルジーを感じてしまうんだろうけど。でもね、限りがあるものに美しさ儚さ切なさを見るのが私は好きなのです。もちろん、そんなきれい事だけじゃあないんですけどね。
前作とは違い、舞台が文化祭ってことで吹奏楽部以外の南高の生徒たちが出てきて懐かしんじゃいました。演劇部やっぱりいいなあ。
謎に包まれた草壁先生の過去の一端が少しだけのぞけた今作ですが、次作がどうなるのかが楽しみ。それと同時に、ハルチカ達の高校生活が折り返し地点を過ぎてしまったのが寂しいです。どん底の状態からスタートした吹奏楽部がどんどん仲間を増やしレベルアップしていく様を読むのが楽しいのだけど、彼らはいつまでも高校生ではありません。ちびまるこちゃんやサザエさんとは違うのだから。お祭り気分の文化祭を終え、次作以降は新たな目標に向けて走り始めるだろう彼らの行き着く先がどこにあるのかを待ちたいです。