王妃の帰還

王妃の帰還

王妃の帰還

最初、タイトルだけを見た時は歴史ロマンものかと勘違いしたのですがそういうことではなく、中高一貫の女子校の中等部のとあるクラスのスクールカーストの話でした。教室内で行われた弾劾裁判によりクラス内ヒエラルキーのトップから滑り落ちた王妃。クラス内を牛耳っていた姫グループに所属していた彼女を引き受けることになったのは地味グループの範子たち。空気を読めずにわがままばかりをいう王妃に困りながらもクラス内の秩序を戻すために王妃を再び姫グループに戻そうと範子たちは奮闘します。しかしそうは簡単にいくはずはなく、クラス内ヒエラルキーはめまぐるしく変化していき、とても制御できはしません。それはもちろん、主人公である範子にも降りかかってきて友情が強くなったり遠く感じるようにもなります。そこらへんの女子特有の面倒くささがあまりとこなく描かれてて面白かったです。柚木さんはそういうのがうまいんですよね。女子中学生らしい良くも悪くも閉鎖的なとこが痛々しくてたまらない気持ちになりました。
これね、共学校の話だったら全然違った感じになったんでしょうね。男子の視線が入ることによってスクールカーストヒエラルキー自体が変わるから。姫グループがトップなのは変わらないだろうが、それ以外のグループの教室内での立ち位置が同じとは思えません。クラス内政権交代の様子だって男子込みならば違ったやり方にもなったでしょう。同性だけ、異性込みどちらのほうのがよいのか悪いのかはわからないが、学校特有の閉鎖性はやはり怖いなあと思います。世の中は学校と家だけじゃなくてもっと広いものなんだけど、それを中学生が頭の中だけではなく実感を伴って理解するのは中々難しいのかもしれません。
胸糞悪い話も出てくるものの、最後はからっとすっきり終わらせてくれてよい読後感の本でした。王妃の名前の秘密も明かされてきれいな終わり方をしてくれています。柚木さんには今後も黒柚木と白柚木をミックスして面倒な女子もののお話を書いてもらえたら嬉しいなあと思います。