嫌な女

嫌な女 (光文社文庫)

嫌な女 (光文社文庫)

弁護士の徹子とその遠縁でトラブルばかり起こす夏子の長い長い人生の話。同じ話を桐野夏生が書いたらもっともっと後味の悪い話になったと思うんです。後味が悪いというかもっと澱んだ感じになったのかなって。物語全体に澱がたまっていくようなそういうお話になったんだと思うんです。でも、そういう方向にはいきませんでした。
最初のうちは夏子をもっと徹底的に嫌な女、悪い女として描くのかと思ってたのに、ちょっと違ったところへと連れて行かれたのです。どう料理するのか、それによってこうも変わってくるものなんだあと思うとやっぱり物語って面白いなあと感じます。夏子は終始、嫌な女でした。若い頃も、年齢を重ねて老女となっても。彼女は時代時代に即した方法で詐欺を働き、そのたびに遠縁である徹子にその尻拭いを頼みます。だけど、夏子は誰かから盗み取るだけじゃないんですよね。だから彼女は時代を生き抜いていったのでしょう。夏子の事を好きにはなれないなあと思うしそばにはいられないよなあとも思うが、それでも夏子みたいな人がたくましく生きていく世の中があってもいいんじゃないのかなって思います。