自己決定権とコミュニケーションの物語としての「おとなりに銀河」

NHK夜ドラで放送されていたおとなりに銀河が先日最終回を迎えた。漫画家である久我一郎の元にアシスタントとしてやってきた五色しおりは流れ星の民の姫だという。ひょんなことから彼女と婚姻契約を結ぶことになってしまった久我。五色がエキセントリックな感じなだけに物語の導入部ではとんでもSFなのかと思ったがところがどっこい、自分はどう生きたいのかであったり、他者とのコミュニケーションについて描く物語であった。

五色は流れ星の民の姫として生きる運命の人間である。彼女は島の民のために生きることを生まれつき決められていた。漫画に出会い外の世界に出て世界の広さを知り、そこから彼女は自分の生き方を自ら決めていく。久我とは当初は婚姻契約により繋がっていたのだが2人が恋におちたことによって婚姻契約を解除して改めて恋人として付き合うことを選ぶ。婚姻契約を結んだままであれば2人はずっと一緒にいることができるしお互いの心を縛ることもできる。しかし彼女たちはそれを望まなかった。

五色は一時的にではなく、島を出る決意をする。それは流れ星の民の姫として生きることをやめるということだ。島の人間は五色に島へ戻ることを願う。しかし彼女は島に戻った上で新たな道を行くことを決めるのだ。自分の生き方は自分で決める。そこに貫かれているのは自己決定の大切さである。自分で選ぶということはそこには責任もついて回る。それも引き受けた上で彼女は自分の道を行くことを自ら決めたのだ。

五色は人の心がわからないという。だから彼女は言葉にして伝えるのだ。「久我さんのうなじに触れてもいいですか」と。自分の触れたいという気持ち、しかし相手は嫌かもしれないという気持ち。それらを天秤にかけ彼女は自分の欲望を伝えた上で久我に許可を求めるのだ。そこにあるのは相手への尊重である。

それ以外でも彼女は度々口にするのだ。「私は人の気持ちがわからないので」と断って様々なことを言葉によるコミュニケーションで丁寧に紡いでいく。流れ星の民の姫のままでいれば、島民とのコミュニケーションは口にせずとも心の内で伝えようとすればよかった。しかし彼女は外の世界に出たいと願い、その世界とは違う生き方を選択した。

自己決定権とコミュニケーションの物語ってすごく今日的なテーマだなあと思うのだ。私が私であること、そのためにどう生きるか。他者との関わりの中でどうコミュニケーションしていくのか。作り方によってはもっとギスギスしたものになったかもしれないが優しい物語であった。優しい中にも芯がしっかりあって私は好きだなあと思う。今後の夜ドラにも期待したい。