聖なる夜に君は

クリスマスをテーマに6人の作家が競作するアンソロジー
「セブンティーン」
17歳の娘がクリスマスイブに友達の家に泊まるといいだしたものの、嘘だと母親の直感で見抜くがどうしたらいいものか悩む話。私はこの話が一番好きでした。奥田英朗の女性もの読むといつも思うのだけどこの人は何故にこんなに女性側に立った話がかけるのだろうかと。母親の逡巡にウソがなかったもの。読んでてすとーんと落ちました。読後感もよかったのもステキ。我が家にも娘がいるけれど、いつかお年頃になったときに私は一体どんな態度をとるのかなーなどと考えながら読みました。
「クラスメイト」
夫の浮気からクリスマスに離婚することになった夫婦の話。クリスマス+離婚というありえないとり合わせながら面白かったです。ここ最近ずーっともう私は角田作品のいい読者じゃないのかなーと思ってたけれどそうじゃないことが証明されました。こういう話、嫌いじゃないです。
私が私であるために
初めてつきあったのが会社の先輩で既婚者であったという主人公が恋に破れ傷心旅行に行く話。恋愛に酔ってる人って自己陶酔をしてると思うんだけど不倫してる人って更に自己陶酔度が高いと思うんです(決めつけ)。なのでそういう人の話は苦手だなあと思いながら読みました。
「雪の夜に帰る」
中距離恋愛をしてるOLの話。不倫小説のあとだったからというのもあったかもしれないけれどこの話の澄んだ空気が好きでした。クリスマスだもの、普通に恋愛してるカップルの話だっていいじゃあないか。
「ふたりのルール」
そう思いながら読んだ次がこれまた不倫OLの話。これハッピーエンドで終わってるけどもハッピーじゃないだろうがと私は主人公の不倫相手の奥さんの気持ちで読んでました。もうさー何なのだろうかこの話。何が二人のルールなんだか。どう考えても都合のいい女の話だと思うんだけど。男が別れを切り出しても「私はあなたとこのままずーっと今まで通りお付き合いしていきたいだけなんです」などといってみたり時間きっかりに帰っていった男に対して「こういうとこ既婚者ってしっかりしてるのね」みたいに感じてみたりどう考えても男に都合よすぎるだろうと。本当にしっかりしてる男は何年もだらだらと不倫続けないんだよって。でもこういう「できる女」と男は不倫したいんだろうなあと思いながら読みました。なんだろう、クリスマスって不倫カップルには一段と燃えるイベントなんだろうか。
「ハッピー・クリスマス、ヨーコ」
話自体は悪くないと思うけど文体が苦手でした。主人公がずーっと語ってるんだけどこれがなあ、うん。ちょっと読みにくかったので読みとばしちゃいました。
しかし6編中2編が不倫OLの話*1とは驚きでした。クリスマスって不倫してる人には一大イベントなの? 男は家族と過ごすから絶対に一緒にいれない切ない日だから? うーんでも私はクリスマスのほわっとした楽しいかわいい話が読みたかったんです。なのでそこら辺が残念でした。

*1:「クラスメイト」でも主人公の夫は浮気してるのでこちらも不倫なので厳密にいえば3篇。てそれ半分じゃないか。