問題のあるレストラン

もう終わってから1カ月以上も立ってしまいましたが、色々と整理するためにこのドラマについて考えてみました。
今にして思えば、初回で描かれたショッキングなセクハラ描写もドラマ的ファンタジーの文脈でこのドラマは走っていきますよって言う意思表示のひとつだったんだろうなあという事です。所々、ファンタジーとしての幸福は描かれていたと思うのですが、最終回はまさにそういうファンタジーを描くことだけに徹していました。というか、最終回は1話丸っと使ってエピローグをやっていたようなものでしたね。もしだけど、もっと放送回数が多くてもっと色んなことを煮詰めて描くことができれば違う最終回が待っていたのかもしれません。あと2話、せめてあと1話でいいから多かったらよかったのになあ。三千院さんの離婚調停やハイジさんの背景について掘り下げる話もできたと思うんですけどねえ。まあたらればをいっても仕方ないんですがね。
雨木社長と千佳ちゃん、2人が雨木少年に呪文をかけ合うシーン。父の呪文を姉が打ち消すような呪文をかけたのを見てこれであの少年は呪縛から解き放たれて自由に自分の人生を歩むことができる大人になるのだろうとホッとしたのですが、そんなことは作中では一個も保証されてないのですよね。少年の心に残るのがどちらの呪文かはわかりません。千佳ちゃんの呪文が弟を救ってくれるはずとは限りません。親の呪いのほうがより強力な魔力を持つ可能性も否定はできないのだから。それを考えるとやはり心がざわざわとします。
雨木社長は2代目社長で彼もまた、親に呪文をかけられたまま生き続けている人間であると最終回で提示されます。門司くんが推測した通りでした。そんな社長が息子にも同じように呪文を唱えるのです。呪いはどこかで断ち切らない限り、きっと永遠に受け継がれていくのではないのかという怖さを感じました。千佳ちゃんの呪文が呪いの鎖を断ち切れると信じたいけど、そう簡単ではないのはわかってるだけに胸が痛くなりました。
最終回はぱっと見、ハッピーエンドを描いているように見えます。しかし、これ全然ハッピーエンドなんかじゃないんですよね。ハッピーエンドに見せてるだけ。その裏に透けて見えてる毒にゾワっとしてくるもの。結局のところ、男女の断絶ってどうにもならないものとして受け止めて生きてくしかないのでしょうか。男女というとあれですが、人間はみなどこかで断絶してて埋められない溝に悩んだりしながら生きているというのが正しいんでしょうが。断絶の先までを描いて欲しかったけどそれはまた次回作以降になるのかな。いつかその先が描かれるといいなあ。
twitter見てると色んな感想が流れてきて興味深かったです。賛否両論色々あってなるほどなーそういう見方もあったんだなあと。どちらがいいとか悪いではなく、色んな見方できること自体が面白いなあと感じました。でもってその感想の根底にあるのは気持ち悪さであるというのが共通してるのもこれまた面白いことでした。
面白かったなあと感じたのはこのドラマのキャスティング。役者の持つ文脈をうまく利用してましたよね。風間くんなんてその最たるものでした。彼が登場した時、誰もが心がざわめいたもの。視聴者の心をあれだけざわめかしたにもかかわらず普通の好青年で終わってちょっと拍子抜けしちゃったけど。でもその拍子抜け込みでキャスティングされたのは間違いないと思うし、いいように手のひらの上で踊らされちゃったなあと。結局のところ、私たちはその瞬間の役者だけでなくその文脈込みで見てしまっていてそこから逃れるのって意外と難しいんだなあと思いました。でもね、そういうのも悪くはないと思うんです。