カムカムエヴリバディ

3世代100年を描いた物語が幕を閉じた。役者は素晴らしかったし見所のシーンは見応えがあり、多いに楽しんだのと同時に物語が進むにつれ、気になる面も増えてきたのも事実である。

見終わったからこそ思うのだが、物語の中心はるいであり、るいを軸に考えられたのは間違いない。それ故に3代目であるひなたは割を食ってしまったのが残念である。ヒロインの娘役ならこの扱いでも私は納得するがひなたはヒロインなのである。ひなた編と銘打つならひなたの人生を描いて欲しかった。飽きっぽくて長続きしなかった子が大人になってから自力で英語を学び、やがて世界へと旅立つんだなんてそんなワクワクした話、駆け足じゃなくもっとしっかり見たいに決まってるじゃないですか。

カムカムは企画段階でどのような予定で実際具現化するにあたってどのように変化していったのかが気になるところでもある。当初はラジオ英会話を巡る母娘3世代100年の物語であったはずがるいを中心にあんことジャズの物語へと変貌を遂げている。解析度が高いところと低いところが出てくるのはあるあるだしいいのだがテーマが期待してたところから微妙にずれていったのはどうしてなのだろうか。ドラマはチームで作るものである。優れた脚本家一人で作るものではない。それ故にチームとしてどう方向性が変わっていったのか等は気にはなる。

予定してた構成と設定をきっちり守るタイプの物語であったカムカム。しかし、回収は物語を推進するためのものである、回収のために物語があるのではない。回収は手段であり目的ではないのだ。回収そのものが目的に見えてしまったのが残念である。

安子編は時代的なこともあり、家父長制による抑圧に苦しめられていた。きっと後々への布石だろうと思っていたが女に厳しく男に甘いのは最後まで変わらなかった。家父長制による抑圧から時代を経て解放される物語ではなかった。結局、安子とるいを引き離すための装置のひとつとしてしか家父長制が描かれることはなかった。千吉も勇も算太も作中で咎められることはなくそれらについてハッキリと謝ることもしなかった。反対に雪衣は必要以上に懺悔をしていた。私は彼女もまた、家父長制の犠牲者の一人だと思うので何故このような仕打ちなのかと疑問である。

ぐちゃぐちゃ書いてはきたけど、楽しんではいたんですよ。楽しくなかったら最後まで見ないもん。ふかっちゃんは素晴らしい役者だ。じっくり見れてよかった。

カムカムはTLでも意見が割れててそれが面白くもあった。自分で作るTLだからそんな大きく割れることはよくあるわけじゃない。しかしカムカムは違った。それがとても興味深かった。安子編ラストについては私は憔悴しきってたとこで駄目押しで心が折れちゃったんだなと同情的に見てたがそうではない意見もあった。逆に私は算太は最後まで語らず懺悔もしなかったどころか、ジョーの音楽復帰へのきっかけとなるラストダンスのシーンまで用意されてたことにないわーと思ったが算太は川に投げ込む程ではないという意見もあった。本当にバラバラだったのよね。それが何だかすごいなーって思うし面白いのだ。検索して反対意見を探しにいってではなくというとこがね。何だかんだで楽しませてはもらえました。